【文系ど素人シリーズ】開発したmixiアプリの敗因分析まとめ あるいはソーシャル・アプリ戦略論

就職活動の現状

昨日の記事ですが、素晴らしい反響を頂いてびっくりしています。実を申しますと、複数の企業の方から既にアプローチを頂けました。近日中にお会いできるところもあると思います。最終的な結果に関しても、企業の了承が取れればこのブログで報告したいと思います。もちろん、全滅だった場合もここで報告します。その時は【文系ど素人シリーズ】は、【ニートのソーシャル・アプリ開発ブログ】に変更する予定です。乞うご期待、じゃない、がんばって仕事を探したいと思います。

さて、本題に入りましょう。昨日は技術的な面からmixiアプリについて書きました。今日は、企画戦略的な面からソーシャル・アプリを見てみましょう。昨日を記事を読んで今、どんなアプリを作ろうかと試行錯誤している人もいることかと思います。そこで、今回僕が作ったアプリの反省を踏まえながらソーシャル・アプリの戦略論について考察を述べます。僕も今回失敗したのですが、webに興味があって勉強している人ほど陥りやすい「罠」がソーシャル・アプリの開発には潜んでいます。企業でそういう戦略を分析してくれる人がいる場合はいいですが、個人で開発する場合はなかなか事前に調べることは難しいし、そもそもmixiアプリの戦略論とか書いてるブログもほとんど見当たらなかったので今日記事にしてみようと思った次第です。なお、モバイル版の開発は行っていませんのでそのままは当てはまらないかもしれません。mixiアプリPC版を企画するときの戦略論としてお読み頂ければ、と思います。では、行きましょう。

今回のアプリは失敗だった

褒めてくださって、本当に嬉しいし、ブログを読んで頂いた方全てに感謝しています。それでも、敢えて言いましょう。今回のアプリは、ソーシャル・アプリの開発という面においては内容・結果、共に失敗だったと。正直な話、企業が作ったものと競合できるくらいものを本気で作りたいと思って開発してたし、生活費くらいは稼げるかもしれないと踏んでいました。発表しましょう。

「一行リレー小説」のmixiアドプログラムからの現在の総収入は462円です。

駅前でダンボールハウスを作り、うまい棒だけを食べて生きれば生活は可能かもしれませんが、その場合ネット環境を用意するのが難しいという問題点があります。いや、そもそも無理があります。というわけで、以下に失敗の原因とその対策をまとめたいと思います。

失敗要因その1 リレー小説は、CGMを目指していた

これが、原因の根本だと考えています。後述する他の要因も、結局はこれを言い換えただけです。


ソーシャル・アプリで取るべき戦略は、みなさんがアツい!!!!とか思ってるweb2.0的なものとは頭を切り替える必要があります。


正直、僕自身もはっきりと切り替えられなかったというのが、最大の敗因です。例を使いながら、説明していきましょう。みなさんご存知、サンシャイン牧場。これに対抗するには、どのような戦略を取るべきでしょうか。通常のweb的な発想から優等生的に答えると、500万弱というユーザー数を抱えたこのアプリに真っ向から対抗しても勝ち目はまず、ありません。ニッチな分野に絞って戦う、差別化戦略を取る、というのが最適に思えます。しかし、果たして本当にそうでしょうか?まず、ユーザー数に関して。例えば、「食べログ」などのCGMサイトを考えると莫大な数の投稿数が既にあるので、僕が今から全く同じ戦略を取ったレビューサイトをオープンしたとしてもヒットの目は全くありません。一部の新しいもの好きのユーザー以外は、食べログを使い続けるでしょう。しかし、サンシャイン牧場が数百万のユーザーを抱えていたとしてもその数が直接強みになるという点はありません。直接的な強みは、「マイミクがたくさんプレイしてる」ということなのです。ユーザーは100万人遊んでるけどマイミクは誰もやってないアプリよりも、1000人のユーザーしかいないけれどマイミクが5人いるアプリの方を遊びます。


つまり、ユーザー数やコンテンツの蓄積それ自体が強みになるというCGM的な発想は通用しないのです。

その上、徐々にユーザー数を増やして行っていつかはキャズムを・・・などといった戦略を取っているとmixiアプリでは失敗要因2に後述する理由によりあっという間に導線が断ち切え、誰も訪れなくなります。ソーシャル・アプリがニッチな分野に絞って差別化して戦う理由は、合理的な観点からはないのです。むしろ、ニッチ戦略は有害である場合の方が多いと僕は考えています。これについては失敗要因3でさらに詳しく解説します。海外で凌ぎを削って来たアプリに似たようなものが多いのは、このあたりの戦略が関係しているのではないか、と思います。


まとめ
・CGM的な発想を捨てよう!
キャズムを超える前に導線自体立ち消える!(理由は後述)
・ニッチ戦略は合理的ではない。むしろ有害かも!(理由は後述)

失敗要因その2 バーチャル・グラフを利用していた

mixiアプリの新着アプリをチェックし続けてる方ならお気づきかと思いますが3月下旬、今回のアプリをリリースした直後にmixiアプリのトップ画面から、新着アプリへのリンクが消えました。現在、新着アプリへのリンクはカテゴリ欄の隅っこよほど注意深く見ないとわからない場所にあります。また現状では、カテゴリーもほとんどすべてが「その他」に分類されるようになっています。そして、「その他」はカテゴリ一覧ページに、掲載すらされません。

これは、mixiが勧めるアプリ以外の導線を意図的に細くするためであると考えるのが適切でしょう。あるいは、新着の極めて細い導線からバイラルに広がるものならば、ヒットしても良しとしようということでしょう。とすれば、mixiアプリを開発するに当たって僕たちはある程度mixiの意図に沿ったものを作り、オススメ欄に掲載される、あるいはカテゴリに分類されることを目指す必要があります。では、mixi側の意図とはどういったことなのでしょうか?

分析する必要はありません。笠原さん自ら、発表しています。

mixiアプリをこれから開発されるという方は、以下の記事を必ず読むべきです。

ソーシャルグラフとバーチャルグラフのどちらが優れているかと比較する意図はなく、それぞれのビジョンが異なるというだけ。ただ(コストをかけて)アプリを作る以上、この違いを理解していただいたほうが、よりポテンシャルの高いサービスを作れるはずだ」

http://internet.watch.impress.co.jp/docs/event/ogc2010/20100217_349493.html



笠原さん自ら、バーチャル・グラフではなくソーシャル・グラフを利用したアプリを推進することを明言しています。よって僕は、バーチャル・グラフを使用したものは、オススメ欄・カテゴリ欄の掲載は絶望的だと考えています。もう一つ、説得力のある例を言うと「記憶スケッチ」がオススメ欄に掲載されていないことです。サンシャイン牧場やハッピーアクアリウムなどが並ぶ中、大ヒットアプリの一つである記憶スケッチがオススメ欄に掲載されてないのは、大きな違和感を感じます。リレー小説は、この記事にあるとおり「過疎化」を恐れ、結果として失敗しました。またここまでmixiが方向性を明言してる以上、もしも現状と違っていてカテゴリ、あるいはオススメに掲載されてれば・・・というのは言い訳でしょう。開発段階で気付くべきだったのです。その上、一行リレー小説には必然的にバーチャル・グラフを利用せざる得ない理由がありました。それは、次項にて説明します。

・まとめ
mixiの意図するアプリ以外は導線が極めて細くなる!
バーチャル・グラフは使わないほうがいい!
mixi関連の記事をチェックしよう!

失敗要因その3 リレー小説は、特定の層をターゲットとしたアプリだった

通常のwebサービスなら、100人に1人が利用してくれるというサービスは大ヒットするでしょう。ただ、あなたが今から作るのはmixiアプリです。前項までに書いた通り、ソーシャル・グラフを利用したものを作る必要があるし、さもなければ導線は限りなく細くバイラルに爆発的に広がるものを作る必要があります。例えば、100人に1人には確実にウケるであろうニッチなサービスをmixiアプリで提供したとします。これは、通常にCGMサイト製作では悪くない、というかセオリー通りの戦略です。しかしソーシャル・グラフの利用を前提としたmixiアプリであった場合、あるユーザーが想定したターゲットにぴったしハマっていたとしても、彼のマイミク達も同時に想定したターゲット層である必要があります。でなければ、彼は友達と一緒に遊ぶことを前提に作られたアプリを一人でプレイすることになるでしょう。


つまり、ニッチなアプリを作って差別化を図るという戦略をとっても、誰とも遊べないソーシャル・アプリが出来上がるだけなのです。


例えば、有名ギークを育成戦わせるゲームとかリリースすればもちろん、みなさんは泣いて喜ぶかと思いますが、一般の人は冷たい目で見るし、喜んでくれるどころか友達を招待してもキモイ目で見られるだです。むしろあなたはそれを恐れて招待すらせにずレベル99まで育てたダンコーガイとかで一人で遊ぶかもしれません。これでは、バイラルに広がる可能性はまず、ありません。この場合、バーチャル・グラフを利用して他のユーザーとも遊べるようにする、という選択肢以外ないでしょう。一行リレー小説はまさにこれでした。β版をリリースしてマイミクだけで遊んでもらったところ、腹がよじれるくらい面白いアプリなのに、なんと腹がよじれるくらい笑ってるのは僕とオタク気質のある知人1人だけで、あとは投稿すらほとんどしてくれなかったのです。最初はソーシャル・グラフメインで考えていたのですが、1人で執筆する小説が散在的に出来るだけという最悪な自体を避けるべくバーチャル・グラフをメインとしたものに変更しました。(ちなみにこのリレー小説は、リリース後の体感で言うとニコニコ動画のヘビーユーザーやネットゲームのユーザー層と親和性が高いように思います)。そして、失敗要因2で説明した通り、バーチャル・グラフを利用した場合ヒットの可能性は極めて低くなります。つまり、最初からニッチな企画ではなく、万人受けする企画で勝負すべきなのです。万人受けする企画、というのはソーシャル・グラフのレイヤーを選ばない、という意味です。みなさんのマイミクも大学時代の友人、地元の友人、会社関係、など様々なレイヤーから成っているはずです。そうしたソーシャル・グラフのレイヤーを超えて遊べる=万人受けする王道企画を選ぶのがmixiアプリでは重要です。さらに言うと、ソーシャル・グラフ失敗要因1で書いた通り、ソーシャル・アプリは後追いでもCGM的なコンテンツの様に極度に不利になるということはないはずです。


※バーチャルグラフを利用しているが、万人受けするものであるためにヒットするというのは可能性があります。記憶スケッチがその例です。但しそうした企画で勝負する場合は、恐らくオススメカテゴリには掲載されない&カテゴリ「その他」になり導線は細くなるという覚悟をしましょう。


まとめ
・特定の層を狙ったニッチなアプリはmixiではヒットしづらい!
・ソーシャル・グラフのレイヤーを超えたアプリを企画しよう!
差別化戦略ではなく万人受けするアプリを企画すべき!

以上、失敗の要因をまとめて来ました。では、それを踏まえてどういうものをつくればいいのか。対策をまとめたいと思います。

対策その1 コンテンツでは無く、コミュニケーションの場を作れ

これまで散々述べたとおり、バーチャル・グラフを使うのはあまりにリスクが大きすぎます。結局、開発者側はソーシャル・グラフをメインにしたアプリを製作することになるわけですが、そこで最も重要なのはコミュニケーションです。当然、ユーザーにコンテンツを作らせて集積するというCGM的な戦略は取りようがありません。そして一人でのめり込めるアプリを作っても、バイラルに広がることは望めません。サンシャイン牧場があんなに単純なシステムなのに面白いのは、友達と遊べるから、に他なりません。もちろん遊んでる人が自分はゲームを遊んでるんだと思っていますが、実際にやってるのはコミュニケーションです。友達のレベルを追い抜く、邪魔する、手伝う。ゲームを遊ぶ中でやってることだけど、これ、コミュニケーションですよね。面白いゲームとかコンテンツの中身より、こういうコミュニケーションをいかにデザインできるかというのが鍵になるのではないか、と個人的に考えています。

対策その2 一部のガチオタ向けではなく、万人受けするものを

これまで述べたとおり、100人に1人の層にターゲットを絞ったニッチな戦略はソーシャル・アプリでは恐らく機能しないでしょう。つまり、ある程度万人受けするアプリを開発する必要があります。その代わりに、超人気アプリと同じコンセプトで真正面からぶつかったとしてもソーシャル・アプリでは勝ち目があります。追い抜けないにしても、数十万ユーザーなら囲い込める可能性があるのです。それは、牧場系とか水槽系のアプリが乱立してる状況を見れば一目瞭然です。

対策その3 感情を、刺激できるものを

コンテンツよりもコミュニケーションが重要だと書きましたが本気でコミュニケーションをデザインしようとすれば、コミュニケーションの起点となる感情をコントロールする必要があるはずです。マイミクに負けたくない!あいつがあそこまで進んでるから・・・・。あの人はあのアイテムを手にいれてるから・・・。みたいに、感情を刺激して持続的に遊ばせる、企業なら課金させるアプリを設計しなければならないということです。

以下の記事に、まさにドンピシャだと思う表現があったので引用します。

例えば、米国のあるソーシャルゲームメーカーは、ゲーム内のアイテム課金は「7つの大罪」(傲慢、嫉妬、憤怒、怠惰、強欲、暴食、色欲)を刺激することでうまく回ると話していたという。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1002/17/news087.html

この7要素を如何に刺激できるか。ソーシャル・アプリ業界がある程度成熟してくると、そこで凌ぎを削ることになるのではないでしょうか。

非同期性

あ、それから最後にもう一つ。これは今回のアプリの場合満たしていたと思ってたので本文中には記述していないのですが、非同期性というのもとても重要な要素だと考えています。通信技術の話ではなく、時間軸の共有のお話です。例えばチャットは遊んでるユーザー同士が同じ時間軸を共有しているので「同期的」なアプリと言えます。対して掲示板は、ユーザーが書き込む時間はバラバラです。これは「非同期的」な時間軸と言えるでしょう。ソーシャル・アプリでは非同期的な時間軸を共有できる設計が必須だと思います。なぜなら、マイミクと同時にログインしてる時間なんて本当に限られたものだからです。特に、個人が開発することになるパソコンのアプリでは同期的にしか遊べないソーシャル・アプリでヒットするのは極めて難しいでしょう。

以上、今回のアプリの敗因分析と、ソーシャル・アプリの戦略に関する考察でした。今のところ、社会的な立場というものが無いに等しいので思い切って断言した部分もかなりたくさんあります。ニートという身分をいいことに好き勝手書かせて頂いたので、言葉の誤用や的外れなことも書いているかとは思います。ですが実際にアプリをリリースした中で思ったことのエッセンスをまとめたので、アプリを開発する際の参考にして頂ければ幸いです。

というわけで

もしも面接して頂ける、という会社があれば

kazu620@gmail.com 

まで連絡を頂ければ幸いです。